2011年10月02日

資料本7

「吉田謙吉Collection 1 考現学の誕生」藤森照信・編 筑摩書房

考現学の誕生

さて、吉田謙吉という人を御存じでしょうか

大正時代から昭和前半期に多彩な活動をした人で、職業欄でまず最初に記載されているのが舞台装置家ということになるようです
大正13年、小山内薫の築地小劇場の創設に参加し、舞台装置と衣装を手掛けています
その後初期のムーランルージュにも美術部員として参加したり
映画でも美術監督や衣装デザインも
さらにタイポグラフィーや、本の装丁
まさに美術系多才の人なんですけれども

「海戦」1924年

築地小劇場第1回公演「海戦」装置吉田謙吉 1924年


今回はこの人のもうひとつの活動
「考現学」を扱った本です

「考現学」とは、現在に置ける(当時の)それはそれはいろんな事を細かく調べて記録する、という活動です
例えば、銀座の通りを歩く人、男女大人子供、その組み合わせを端から端まで歩いて記録する
また、歩いている男性の腕の形、組んでいるのか振っているのか、ポケットに突っ込んでいるならそれはズボンか上衣か、右か左か両方か、荷物を持っているなら抱えているのかぶら下げてるのか、脇に挟んでいるのか
とにかく細かく記録して統計を取る

考現学の誕生 裏表紙

裏表紙 道行く女性の腕のポーズの統計


他にカフェーの女給のエプロンの採集、職人の手ぬぐいの巻き方、犬小屋の形、歩道に捨てられた煙草の吸い殻の長さと銘柄、もうこんなものは極々一部
とにかく採集と記録と統計に対する執念がスゴイ

考現学 展覧会

昭和2年、紀伊国屋で行なわれた展覧会での展示物
読みにくいので一部書き出してみましょう

丸ビル、モダンガール散歩コース
丸ビル紳士いねむり状態
某新婚家庭物品一切しらべ
茶碗のワレ方
ガラスのワレ方と補貼
東京露天商人コシカケ
踏切カンヌキ棒其の他
荷車人夫の具合
宿屋の部屋と御馳走
丸ビル本屋の立読み手の具合
東京長屋便所のクミ取口
おしめの模様帳
鼻のたらし方
洋服のヤブレ個所
駄菓子の実測図
おんぶの形式
東京場末女人の結髪
井の頭公園自殺者地図
東京めしやのサゲ看板

などなど、など
こういったものがすべて詳細なスケッチとともに記録されています

「附言」
この展覧会はこゝ三年間私達のやった仕事の展示です。
かゝる仕事を私達は仮に考現学と称して、考古学でやる方法を現代に適用してみているのです。
即ち現在眼前に見るいろいろのものを記録し、そのしらべの方法をどうやったらいいかに就いて努めている次第です。
御覧の通り万般のものに就いて試みています。
御批評を仰ぎます。


そんなもの調べて何になるのか、とも思いますが、しかし現在から見れば大変貴重な風俗資料となっている、ということです

当ブログで取り上げたアサヒグラフの記事に於いても昭和8年の街撮りの中で、現代生活調査会として吉田謙吉氏の名が出ていました
同様に名前の出ていた今和次郎(こん わじろう)という人が東京美術学校時代の先輩で、この二人で「考現学」を始めた、という事のようです


浅草紅団

浅草カジノフォーリーの名を広めた小説といえば、川端康成の「浅草紅団」ですが、昭和5年に出版された時の装丁を吉田謙吉がつとめています

考現学活動の中に、作家の書斎採集というのがあって、大佛次郎やサトウハチロー
吉屋信子、林芙美子などと共に川端康成の書斎もあったので、そのスケッチを載せておきましょう

川端康成の書斎


絵を描く資料にはあまりなりませんでしたが、読み物として面白かった本でした


さてこの本も例によって古本屋で見つけたのですが、
そんな古書市のお知らせ

大阪四天王寺秋の大古本祭り

大阪四天王寺秋の大古本祭り
今年は10月6日(木)〜11日(火)です

ああ、もうそんな季節になりましたか

べつに関係者じゃないんですけども
恒例なのでお知らせまで
 
posted by nakaco at 19:15| Comment(4) | TrackBack(0) | Illustrator
この記事へのコメント
いろいろと為になることをお書きの様ですので
ときどき覗いています。
吉田謙吉さんって知りませんでしたけど
考現学って、なんだか民俗学みたいですね。
Posted by muzik at 2011年10月03日 06:58
>muzikさん
こんにちは
考現学は、当時の於ける現代社会の民俗学と言えるかも知れませんね。
当ブログは特に為になる事は書いてないのですが、のんびり更新しておりますので、よろしければいつでも覗いてみてくださいね。
Posted by NAKACO at 2011年10月03日 15:47
nakacoさん、こんばんは

為になってますよ〜、私には(^^;)

私も吉田謙吉という人、知りませんでしたが
藤森照信編ということで、なるほどという感じですね。
藤森照信氏といえば路上観察学会。
考現学の流れをくんでいるわけですよね。

いや〜、やっぱり為になります、このブログ。

古本市、なにか掘り出し物があるといいですね。
Posted by アネモネ at 2011年10月05日 21:37
>アネモネさん
こんばんわ

そうですか、為になっていましたか。
ただし、時々妄想、憶測、勝手な解釈、しらべ間違い、などがありますので要注意。

週末はお天気が良いそうなので、四天王寺ブラブラの予定です。
Posted by NAKACO at 2011年10月05日 22:47
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/48291797

この記事へのトラックバック