さて、70年代日本SFの文庫本を掘り返してカバーイラストを見る。
今回は「光瀬 龍」の巻です。
なぜ光瀬龍かというと、特に理由はないのですが、強いて言えば、とてもSFらしいSF、という事になるでしょうか。
ハヤカワ文庫JAシリーズにおいても、小松左京、星新一に次いで3冊目に「たそがれに還る」が刊行されています。
うちにあった一番古いのは、JAシリーズ6冊目に出たこの本でした。

「百億の昼と千億の夜」
ハヤカワ文庫JA 1973年4月15日(日付は初版発行日)400円(価格は出版当時)
著者の代表作とも言える長編ですが、例によって内容は忘れています。
小説の話ではなく装丁の話という事で。
カバーイラストは金森達(かなもり とおる)氏。

「カナン5100年」
ハヤカワ文庫JA 1974年4月10日 320円
カバー 金森達
東キャナル市もの、光瀬版宇宙年代記、ハード、好きな人にはたまらない。
ということですが、実は私はそんなにハード派ではなかったのでした。
金森達氏は60〜70年代を代表するSFイラストの巨匠ですね。
上の2冊は、絵具を盛り上げるように乗せて、無作為な形状を作る、という抽象的な技法で、内容である宇宙の辺境の未知なるもの、あるいは長大な歴史の深遠なる流れ、的なイメージを表現、みたいな感じでしょうか。
本来の金森氏は、実に60年代的な、解りやすくてカッコイイSFイラストを描いていた人です。

「喪われた都市の記録」
ハヤカワ文庫JA 1976年2月22日 580円
ね、カッコイイ。
これは金森氏の画集の表紙にも使われている、氏の代表作と言えるのかもしれません。
「喪われた都市の記録」としては、初出版のハードカバーから使われているイラストです。
570ページある分厚い文庫。
内容は、やっぱり全然覚えていませんが、目次を見ていると物凄く面白そうです。
ところで、この本は570ページで580円。
「カナン5100年」は310ページで320円。
「百億の昼と千億の夜」は400ページで400円です。
この時期のハヤカワ文庫は1ページ1円見当だったんでしょうかね。
さて光瀬龍氏にはこのような宇宙ハードSFの他に、時代時空SFとでもいうべきシリーズがありまして、私はどちらかというとそっちの方がお気に入りでした。

「寛永無明剣」
ハヤカワ文庫SF 1973年12月10日 320円
カバーイラスト 石井三春
時空間移動が可能になった未来、時空犯罪者から歴史を守るために活躍する時間管理局江戸時代支部、みたいな感じの話だったと思うんですけど。
私はSF小説も好き、時代小説も好き、という小説読みだったので、一冊で二度美味しいというシリーズだったわけです。
石井三春という人は、これも60〜70年代にSFやジュブナイル作品の挿絵などを多く手掛けた人、だと思うのですが、あまり記録が無いのですね。
現代的な絵ももちろん描いていたようですが、このシリーズでは特に日本画的技法と確かな時代ディテールにより、ただでさえカッチリとした光瀬龍の江戸時代描写にイメージ面からも大いに貢献している、というわけです。
こういう小説は時代描写にリアリティーがあった方が一方のSF部分とのコントラストといいますか、ギャップの楽しみといいますか、そういう面白さが生きてくるなあと思いましたね。

寛永無明剣 挿絵

歌麿さま参る 挿絵
この小説シリーズとこの装丁挿画の組み合わせは、誰が考えたのか知りませんが、実に絶妙、個人的には大好きですね。
今回はこれが言いたかったのか。

「多聞寺討伐」
ハヤカワ文庫JA 1974年6月10日 250円

「復讐の道標」
ハヤカワ文庫JA 1975年4月10日 220円

「歌麿(うた)さま参る」
ハヤカワ文庫JA 1976年5月20日 290円

「征東都督府」
ハヤカワ文庫JA 1977年11月10日 380円
これは挿絵なし
現在書店で買える光瀬龍の文庫本は思ったより少ないようですね。
古書にてこのシリーズを探す折は、ぜひ石井挿画のあるものをオススメします。
関連記事:
70年代日本SF(小松左京の巻)70年代日本SF(星新一の巻)70年代日本SF(筒井康隆の巻)